はあ~~、お呼びですかぁ~~

白衣の堕天使のぼやき

人生ドラマは産婦人科にあり

私が産婦人科に勤務していた頃。
東病棟には切迫流産や切迫早産の妊婦さんが入院していて、反対の西病棟には、中絶する人が一時休養する部屋があった。子供が欲しくても、中々できなくて、やっとできたと思ったら風疹になり、やむなく中絶。今度こそ!と思ったら切迫流産。ベッドに張り付いて、動かずにじっとして点滴に耐えて、8か月を迎える頃、採血したら、血液に牛乳みたいな色のが混ざってた。動かないから中性脂肪などが上がってたのだ。その妊婦さんは無事出産したが、今頃お元気でいるだろうか・・・なんか病気になっていそうな気がする。
明日が予定日の妊婦さん、朝から胎動がなくなったので、いよいよ出産かと思ったら、臍帯が石灰化しておなかの中で胎児は死亡。薬で出産させて、亡くなった子供を一晩抱いて泣いた。たしか、学校の先生だった。
某有名進学校の女子生徒、遊びが過ぎて妊娠。どういう手続きしたのかわからないけど、5か月になろうかという子供を無理やり出産にもっていく方法で中絶。掻把(掻きだす方法)とちがって原型のまま出てくるので、ネズミの赤ちゃんのような胎児を娩出。その時の女子生徒の言葉は「へえ~~人の形してんだ」と、涙一つ見せなかった。
成績はいいのか知らないけど、こういう女の子は人間じゃないと思った。
何人もの胎児が闇に消えた。娩出して口を開けて息をしようとする胎児も居れば、無脳児という大脳の無い子もいた。どうして普通に産んでやれなかったのかと、悲しい気持ちでいっぱいになる。
かと思えば、ある女性、妊娠5か月で、どうしても中絶したいと入院してきた。理由は「旦那の子か不倫相手の子か自分でもわからない」から。午前中は不倫相手、夕方は旦那さんが面会にくる。不思議と鉢合わせにならなかった。医師は断固として中絶はせず、妊娠悪阻(ひどいつわり)の治療をして退院させた。さあ・・どうなったのかなあ。あれから20年近くなるから、生まれていたら20歳。ここで小説なら、その子は不倫相手の子供と出会って恋愛して、「お前たちは兄妹なんだ、結婚できないんだ」なんて話になるのだろうが、現実はもっと複雑かもしれない。
外来で、妊婦健診に来た女性。血液検査で性病が発覚。旦那さんに対する不信感いっぱいで、泣きながら帰っていったが・・・その後の修羅場が目に浮かぶ。
本当に「生と死」のドラマががありありと見える産婦人科。あまり楽しい職場ではなかった。

ちなみに、私はクリスチャンだが、処女は懐妊しないと思う。マリアさま、ごめんなさい